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ルターの薔薇の紋章について

ルターの薔薇の紋章


この紋章はルーテル教会などのホームページなどでは、“この紋章には「薔薇の上に置かれたキリスト教徒の心臓は、十字架の真下にあるとき脈打つ」という題字が記されています。黒い十字架がついた赤いハートは死んで甦ったキリストへの信仰、その周りの白い薔薇はこの世を越えた喜び、慰め、平和を、空色の地は天の喜びの始まりを表し、それらを囲む輪は永遠にして高貴な救いを与えられていることを象徴しています。”(日本福音ルーテル教会北海道特別教区HPより)などと手短に説明されていることが多いです。

ルターの薔薇の紋章 北海道特別教区

 
 岩波書店発行の「十字架と薔薇 知られざるルター」(松浦純 著)の最後のページにて、この紋章についてこのような説明がなされています。

ルター薔薇の紋章 元


" ルダー一族の紋章には二輪の薔薇が配されていた。それをもとに、1517年初めからルターは、薔薇の中にハートを置き、さらにその中に十字架を置く形の封印を用いる。20年代には、著作の海賊版の横行への対策として、この図柄を「神の子羊」図と並べて検印のようにも使いもした。じきにヴィッテンベルクの出版社達がこれをタイトルページのデザインの中に取り入れるようになる。1540年、妻カタリーナが住居の玄関を改築した際には、左右の天蓋のうち、左のものの下面にはルターの肖像、右のものの下面にはこの図柄のレリーフを彫らせた。本書のカバーはそれを写した。薔薇の周囲には「彼は生く」という銘をめぐらしている。
 これを「わたしの神学の目印」に見立てて説き明かした1530年の手紙によれば、十字架は、自然の色をしたハートの中に黒々と印される。十字架の黒は、「滅却し苦痛を与えるといっても、ハートの色をそのままにおいて、自然の本性をそこないはしない。それは殺すのではなく、生命を保つ」。そしてその心は、霊と天使の色である白い、晴れやかな薔薇の上におかれる。さらにその薔薇がおかれるのは、天の色の上。それが、この晴れやかさが将来の天の喜びの端緒であり、まだ目に見えないが希望によってとらえられていることを示す、という。…"

(「十字架と薔薇 知られざるルター」 松浦純 著 岩波書店 p.248。 ルターのもともとの姓はルダー〔Luder〕で、1517年の終わりごろからルター〔Luther〕の表記が見られるようになった。)

ここで述べられているルターの1530年の手紙というのは、1530年7月8日付のラザルス・シュペングラー宛のマルティンルターの手紙のことで、ルター著作集であるWA, Luthers Briefwechsel, 5. Band, S. 444f (Nr. 1628)に出てきます。以下にWikipediaのドイツ語版Lutherrose(https://de.wikipedia.org/wiki/Lutherrose)の引用文をWA, Luthers Briefwechsel, 5. Band, S. 444f と同じ改行にして、著作集に振られた行番号も付けてみました。引用では省略されている個所が示されずに続けられていまして解りませんので、「・・・」を付しました。特に12行目の終わりから13行目が省略されているのがちょっと探すのに時間がかかりました(もちろんドイツ語は読めないからこそです)。

・・・ein Merkzeichen meiner Theologie.
5 Das erst sollt ein Kreuz sein, schwarz im Herzen, das seine natürliche Farbe
hätte, damit ich mir selbst Erinnerung gäbe, daß der Glaube an den Ge-
kreuzigten uns selig machet. Denn so man von Herzen glaubt, wird man
gerecht. Ob’s nun wohl ein schwarz Kreuz ist, mortifizieret und soll auch wehe
tun, dennoch läßt es das Herz in seiner Farbe, verderbt die Natur nicht, das ist,
10 es tötet nicht, sondern erhält lebendig. …
・・・Solch Herz aber soll mitten in einer weißen Rosen stehen, anzu-
zeigen, daß der Glaube Freude, Trost und Friede gibt ・・・
・・・
  darum soll die Rose weiß und nicht rot sein; denn weiße Farbe ist der
15 Geister und aller Engel Farbe. Solche Rose stehet im himmelfarben Felde,
daß solche Freude im Geist und Glauben ein Anfang ist der himmlische
Freude zukünftig, jetzt wohl schon drinnen begriffen und durch Hoffnung
gefasset, aber noch nicht offenbar. Und in solch Feld einen goldenen Ring,
daß solch Seligkeit im Himmel ewig währet und kein Ende hat und auch
20 köstlich über alle Freude und Güter, wie das Gold das höchste, köstlichste
Erz ist. ・・・

1530年7月8日 ラザルス・シュペングラー宛のルターの手紙

"ルターの紋章

私の紋章が正しく意味をあらわしているかどうか知りたいということだそうですから、よいお交わりのためにも、わたしの紋章について思いいたる考えをお知らせすることにいたしましょう。これは私の神学の目印とも言うべきものなのです。第一は十字架です。それは、自然の色をした心臓の中に黒く描かれています。これによって私は自ら、十字架につけられた方を信じる信仰が私たちを救うことを思い起こしたいのです。なぜなら、人が心から信じるならば、義とされるからです。それが黒い十字架であるというのは、死のしるしであって、痛みを与えるべきだからです。しかし、心臓が自然の色をしているのは、本性がだめなのではないということです。十字架は殺すのではなく、生かすからです。義人は信仰によって、それも十字架につけられた方を信じる信仰によって生きるのです〔ローマ1・17〕。
 この心臓は白いバラのまん中にあります。信仰は喜びと慰めと平和を与えることを示すためです。それはこの世が与える平和や喜びとはちがいます。だからバラは赤くなく、白なのです。白は霊と天使の色だからです。このバラは空色の地の中にあります。霊と信仰とにおける喜びは来るべき天の喜びの始まりであり、今すでにその喜びの中にいれられており、希望によってとらえられてはいるが、まだ完全に明らかにされてはいないからです。その地のまわりに金色の輪があります。それは、そのような救いが天では永遠に続き、終わりがないということを示します。金は最高の、高価な金属だからです。私たちの愛する主キリストがあの世に至るまであなたの霊と共にあるように、アーメン。
(「シュペングラーへの手紙」1530年7月8日 Br.5・445)"

(「世界の思想家 5  ルター」 徳善義和 編 平凡社 pp.36-37)


 ルターについて書かれる牧師や研究者の方たちは、ルターの言葉などよく引用されたりするのですが、ちゃんとした出典箇所が示されないことが多く、困ったものだといつも思います。

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ルターの薔薇の紋章種類


「脈打つ」? 「向かう」?

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