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B.H.カウパー編アレクサンドリア写本の脚注から


 18世紀にカール・ゴットフリート・ヴォイデによって、アレクサンドリア写本の精巧なファクシミリ版が作られましたが、何ヵ所かに組版のエラーが含まれていました。それを B.H.カウパーと E.H.ハンセルによって修正したものが、1860年に出版された「CODEX ALEXANDRINUS. Η ΚΑΙΝΗ ΔΙΑΘΗΚΗ NOVUM TESTAMENTUM GRAECE EX ANTIQUISSIMO CODICE ALEXANDRINO」になります。

 このカウパー編のアレクサンドリア写本のいいところは、写本の情報が欄外注にある所です。大英博物館発行のアレクサンドリア写本写真ファクシミリ版や大英図書館で公開されているアレクサンドリア写本のデジタル画像では、写本それ自体を見ることはできますが、写本の中に在る情報が記載されているわけではないので、カウパー編のファクシミリ版は役立ちます。ただし序文も欄外注もラテン語なのがネックです。ちょっと気になったものを二つ三つ挙げたいと思います。

ルカ16:26では本文に
・・・ ἔνθεν πρὸς ὑμᾶςμας 1) μὴ δύνωνται,

と問題箇所に注が付き、欄外にて

1) προς υμας μας. Sic μας repelitum
1) προς υμας μας.それでμαςが繰り返されました。

と説明されています。本来であれば、ἔνθεν(ここから) προς(ところに) υμας(あなたがたの)、「ここからあなた方のところに」という文章になるのですが、υμαςで終わらずに改行した時にまたμαςから始めてしまってυμας μαςとなってしまっています。本来一度だけの語や語句を誤って繰り返してしまう重複誤記(ディトグラフ)が起こってしまっています。ネストレや聖書協会のギリシヤ語新約聖書など批判的校訂本には出てきません。

写本の画像も上げておきます。

アレクサンドリア写本 ルカ16・26


 次に17:1の脚注

Εἶπεν δὲ πρὸς τοὺς μαθητὰς αὐτοῦ, ἀνένδεκτόν ἐστιν τοῦ 2) μὴ

2) εστιν εσ rescriptum a manu antiqua εσ vix legitur, et quaedam literae inter εσet τιν deletae.
2) εστιν εσ は古代の手によって書き直されていますが、εσ はほとんど判読できず、εσ と τιν の間のいくつかの文字は消去されています。

写本のデジタル画像を見て見ますと

ΑΥΤΟΥΑΝЄΝΔЄΚΤΟΝЄϹ
ΤΙΝΤΟΥΗ・・・・

アレクサンドリア写本 ルカ17・1

アレクサンドリア写本 ルカ17・1 拡大
(ЄϹとそれに続く空白の個所の拡大)

となっており、鮮明ではないЄϹの後に二文字ぐらいの空白があります。そして改行してΤΙΝと、不自然に区切られています。

 最後にもう一カ所。マルコ15:21

Καὶ ἀγγαρεύουσιν παράγοντά τινα Σίμωνα Κυρηναῖον 1) ἐρχόμενον ἀπ᾽ ἀγροῦ,

1) Κυρηναιον ν et η atrament recenti reseripta, olim forte Κηρυναιον
1) Κυρηναιον ν と η は新しいインクで書き直され、おそらく元は Κηρυναιον

Κυρηναιον(クレネ人)を書くところを誤ってΚηρυναιονと書いてしまって、あとで(インクの色が違うから書写した人とは別な人?)修正したのかな?

デジタル画像で見るとインクの色が違っていて、修正したように見えます。

アレクサンドリア写本 マルコ15・21

19世紀のファクシミリ版と現代のデジタル公開画像を比べて見ると面白い発見があると感じました。

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