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プルタ ⑵


 さてこの前、プルタと言う記事を挙げましたが、邦語訳聖書の訳文については軽く触れただけですので、ちょっと見て見たいと思います。

2プルタ硬貨. マイブログ入り



        マルコ12・42、ルカ12・59、ルカ21・2

ヘボン   鐚(びた)二つ

元訳    レプタ二つ、一錢、二厘

改訳    レプタ二つ、一レプタ、レプタ二つ

口語    レプタ二つ、一レプタ、レプタ二つ

新共   レプトン銅貨二枚、一レプトン、レプトン銅貨二枚

共同   レプトン銅貨二枚、レプトン一枚、レプトン銅貨二枚
(パイロット版)

新改   レプタ銅貨二つ、一レプタ、レプタ銅貨二つ

正教    二「レプタ」、豪釐(がうり)、二「レプタ」

ラゲ明  二ミスタ、一厘、二厘

ラゲ後  二ミスタ、一りん、二りん

バル   二レプタ、一レプタ、二レプタ

フラ    レプタ貨二枚、一レプタ、レプタ銅貨二枚

詳訳   銅貨〔最小の貨幣〕二枚、一レプタ、レプタ〔銅貨〕を二枚

塚本  レプタ銅貨(五円)、一レプタ(五円)、レプタ銅貨(五円)二つ

岩隈   レプトン銅貨二枚、一レプトン、レプトン(銅貨)を二枚

岩波   二レプタ、一レプトン、二レプトン

田川   小銭を二つ、小銭一つ、小銭を二つ


 こうやって並べてみますと、多くの聖書学者が、本当にそのような貨幣があるかを吟味しないで、無批判にあるものと思いこんで翻訳しているのが見て取れます。その中でもひどいのはフランシスコ会聖書研究所訳の2011年旧新約合本版の訳注はひどいものです。

フランシスコ会聖書研究所訳注 記名入り小


マルコ福音書の前に解説が付され、その中でマルコ福音書の執筆場所について

" 場所と年代  先に挙げた古代からの伝承によれば、本書はローマで書かれたとされる。それを裏づけるものとして指摘されることは、本福音書には、他の福音書と異なり頻繁にラテン語が用いられていることである。たとえば、「レギオン」(5・9)、「スペクラトール=衛兵」(6・27)、「デナリウス=デナリオン」(6・37)、「クセステース=鉢」(7・4)、「チェンスス=人頭税」(12・14)、「クァドランス」(12・42)、「ケントゥリオ=百人隊長」(15・39)である。また、ラテン語の使用以外にもユダヤ地方の地理に関する不正確な記述(5・1、7・31、11・1など)、「タリタ・クム」(5・41)、「エッファタ」(7・34)などのアラム語やユダヤ人の慣習(7・3-4)についての補足説明が見られる。そのため、本福音書はパレスチナの地理に不案内な著者が、地理をも含めてユダヤ教の文化、伝統とは疎遠な読者に向けて、ローマで執筆したものであると説明されてきた。
 しかしながら、ローマ支配下にあった当時、ラテン語が帝国内に広く流布していたことは十分に考えられる。したがってラテン語の使用にローマ成立の根拠を見るのは妥当とは言えず、本福音書の成立地については、ユダヤ世界の近辺という大まかなことしか言えない。"
(「聖書 原文校訂による口語訳 フランシスコ会聖書研究所訳注」 p84(新))

 ローマでの成立を妥当としないという見方をしていながら、当該個所の註では

"(11)レプタはギリシャの最少額銅貨であるが、著者はローマ人の読者に分かりやすいように、それをローマの貨幣になおして 「一コドラント」 すなわち、アス貨の四分の一であったと説明する。アス貨は銀デナリの十六分の一であるから、このやもめのさいせんは非常にわずかであった。なお一デナリは当時の労働者の一日の賃金〈マタイ20 2参照〉。"
〈「新約聖書 フランシスコ会聖書研究所訳注」 1984年改訂版 マルコ福音書12:42の註〉

 と、ローマ成立説で説明しています。

 聖書学者が付した中だからと言って、そのまま鵜呑みにすると、間違った情報を取り入れてしまう典型な個所と言えるかもしれません。特にカトリックの註はカトリックの強いバイアスがかかっていますので注意が必要です。

 さて、この中で異色な言葉がラゲ訳で見られます。ラゲ訳とバルバロ訳は翻訳の底本が聖書写本の校訂から作られたギリシャ語校訂本文ではなく、ラテン語訳ウルガタから翻訳されているからです。バルバロの方はギリシャ語校訂本文に合わせたのでしょう。

 二ミスタとは、ミスタ二つで「細かいの二つ」という意味なんでしょう。もしレプトンが古代ギリシャの貨幣単位であれば、音訳されていたはずですが、そうではなく「小さい・微細」という意味の語ミヌトゥスを使っているのも、田川訳ではないですが「小銭」二つという意味にラテン語では古くから訳されていたのでしょう。

マルコ 12_39-44 古ラテン訳・ウルガタ対訳


 四世紀のヒエロニムスのラテン語訳ウルガタではなく、すでに二世紀の古ラテン訳聖書(古ラテン語訳の意味ではないので注意)にこの訳語が出ています(マルコでは単に「二つ」と出ていて、ルカではウルガタと同様ミヌトゥム、ミヌタと訳されている)。

 二世紀のラテン語訳にこのように訳されているのは参考になると思います。



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